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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页
知っていることを、知っている通りにいってくれれば……そうさな、極々、軽いところで、済まそうじゃないか」
「いったい、何のお訊ねで……」
「ほかじゃあないが」
左右太は、静かに、たずね出した。
堀留の事件の前夜に、ここで木更津船の岩五郎から、苫船を一艘借りた者があるはず。その人態、その他の事だった。
おかみは、つつまず話した。――だが、あくる朝、その苫舟から、男女五人の連れが、此家へあがって、朝めしをたべ、そして帰ったさきは、いいたがらなかった。
「じゃあ訊くまい。実あ、分っているのだから。……だが、同罪に陥ちるなよ」
もちろんこれは左右太のおどしだった。
おかみは、ふるえ上がって、一切を告げた。その朝の様子も、つぶさに話した。――ただ、この場合、かの女の心理には、化物刑部といわれる悪の元兇から、後々、あだをされることを、極度に恐がっているのである。
「刑部も、苫舟から、一緒に降りたのか」
「いえ、あの化物刑部は、ぜん息病みで、床についているということですが、それでも、すごい睨みがきくとみえて、悪党仲間では、刑部をおそれない者はございませぬ」
「案内してくれないか。