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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页

青空文庫

「陪席におられる御両所は、公儀お目付の松平藤九郎殿と、有馬源之丞殿の御配下の由でございまする」

と、知らせた。

すると、初めて、その二名は、奉行の方へ一礼して、

「てまえは、松平殿の組下、横目付秋山左内でござる」

「それがしは有馬源之丞殿の内、同じく横目付を勤める太田喜左衛門と申す者……」

と、同時に、名乗った。

さらぬだに緊張していた仮白洲は、二名の横目付の立会を加えたので、一層、ただならぬ空気をみなぎらした。

目付は、千石程度の旗本格から選ばれ、身分は大した者ではないが、老中、勘定奉行、若年寄、両町奉行も、すべてその監察下に置かれてあり、将軍家へ直言する権能も持っていたので、うしろ暗いものをつつんでいる武家たちには、目付といえば、怖れられていた。

俗に“横目”というのは、目付役の組下である。そして目付も、横目の者も、町奉行所へなども、突然、随時随意に出入りすることができたので、市民には恐がられて、恐い者知らずのように見える町奉行所の者でも、

(横目が来た)

と、囁かれると、たちまち、警戒して、皆いやな顔をしたものだったという。

だが、その横目たちが、どうして今夜の事をもう知ったのだろうか。