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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页
その条件というのは。
(この事件は、ただ市井の無頼や押込みなどが頻々と起した些々たる小事件とのみは観られず、またその小事件だけを、切り離して、裁決することは出来ないし、なお将来の治政上にも、何の戒めにも、善策にもならないと信じる。要は、根本からこれらの社会悪と個々の罪のありどころを突きとめ、ふたたびかかる人心の害と不安とが起らぬように、抜本的に、禍根を断ち、もって、政道の公明を期さねばならぬ。しかも、そうなると、これらの悪の連鎖が世を毒して来た歳月は長く、その本は、遠い前々将軍家の御代にまで及ぶことになり、なお地域や関わる人間は、西国の不平浪人の徒から、海外国内に足をかけている密貿易者の群にまで及んで、一挙に、これらを皆、犯罪者として検挙することは、到底、一町奉行の力をもっても、公儀の御威光を以てしても、覚つかないものと思う。しかし、篤と、越前の所存いたすには、本の罪悪の禍根を断ち、将来の御政道に公正を示し、人心を明るくして、庶民の生業をここに楽しませる裁決は決して不可能ではないと存ぜられる)
こういう意見書の内容であった。そして、終りに、かれは、こういう一条を明記していた。