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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

ハハハハ……と、真面目な中に、酒興もふくみ、日ごろ以上の親しみも深めて、うち解けている体なのであった。

その間、ほかの人びとは、いよいようるさく、

『また義清が、歌の話ぞよ。あの男が、ものをいうと、とかく、いつも、酒が醒める』

『――主どの、主どの。それよりは、早く、ほんものを、見せ給え』

『疾く、これへ、お召しあれい。われわれ朋友にも、いちどは、おひき合わせあって然るべきであろうが』

と、渡の背へ、ほえやまない。

『さりとは迷惑な。この貧しき屋へ、白拍子でも、呼べとやいわるる』

『なんの、都の白拍子にも、江口、神崎の遊君たちにも、競ぶべきは無いといわるる御内方を、ちょっと、招かれれば、みな、気がすむというものだ。いかんぞして、こよい、袈裟どのには、チラとも、お顔を見せられぬか』

『お。妻が姿を見せぬというおとがめか。アハハハハ……。ゆるされい、ゆるされい。あれは、まったくの内気者よ。厨にばかりいて、水仕をしたり、酒をあたためたり、ひたすら、客人たちのお心に染まばやとばかり働いておる。性来、そういう女子なのだ。所詮、おのおのの御座ある灯あかりの前には、得もすわるまい』