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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
『そうだ。盛遠も、のがれぬところと、観念すれば……おれを思い出しているにちがいない。この清盛を、待っているような気がおれにはする。――木工助。父上が見まわって来られたら、左様に、お告げしておいてくれい』
木工助の危惧を、なだめるためか、薙刀も預け、馬も用いず、かれはわざと徒歩で行った。もっとも、すぐそこといえる距離ではあるが。
大内裏の外郭をなす十二の門のほかに、べつに掖門として、上東門院と、上西門院とがある。王城の森の北端、殷富門の先に見えるのが、それである。ここには、鳥羽の第二の皇女、統子内親王が住まわれている。――袈裟も、もとは、ここの雑仕。盛遠も、遠藤三郎盛遠といい、以前、ここの侍所にいたことがある。
疑いうる理由は、充分だ。皇女のお住居だからとて、除外していいものではない。むしろ、匿まう者にも、潜伏する者にも、気づよい掩護を思わせているかも知れないのだ。清盛は、次第に、足が弾んでいた。
すると、清潔な大路を抱く松並木の横から、待てまてと、どなる声がした。――そこな雑武者待てと、つづいて聞こえる。清盛は、足をとめて、
『おれか……』と、わざと、面ふくらして、ふり向いた。