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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
姫たちの母は、すでに世に亡い人だともいう。男手に子を育てる苦労は、忠盛どのもお分かりだが――とも、述懐する。
酔うほどに、この男親は、自分が、世と妥協のできない性格のために、むすめたちにも、ほとんど、処女の楽しみらしい思いは何もさせずに来た――ということを、笑い泣きみたいに語るのであった。そして、座に侍る時子のすがたへ、親の眼を、ちらと、無意識に向けては、またいった。
『十九でおざるよ。……もうすぐ二十歳ともなるのに、客人のまえでは、よう、ものも得いわぬ方でなあ』
十九か。と清盛はちょっと、がっかりした。時代の常識では、おそいといえる年だからである。が、こう売れ残っているゆえんは、時信の述懐のとおり、罪、男親にあって、姫の容貌に帰すべきではあるまい。
(いや、わが家の父忠盛にも、多少、責任の一半がないともいえぬぞ)
それについて清盛は、近ごろもまた籠居している父の苦衷を考えた。――禍因は、いつも、きまっている。例の“昇殿問題”が起こりなのだ。
問題は、すでに過去でも、“いつかは除くべき人物”として、忠盛の名が、院の公卿たちの排他主義の底流に監視されていたことは、変りがない。