轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
――何せい、髪もヒゲも、面を埋むばかり伸び、眼は、くぼみ落ちてしまい、この世の者とも見えず、身を寒うしたということでございます』
『ほ。……そうか』
西行は、燃えさしの榾を持って、炉の灰に、何やら書いているだけだった。
文覚の、それほどな悔悟と、捨て身にたいして、さすがに、かれを武者の面よごしと、ひところは、ののしっていた源五兵衛も、いまでは、同情的な口うらに、変っている。
だが、西行は、そうでない。盛遠のとった道と、その正直さは、理解できるけれど。こうして、春寒の夜を、炉にすわって、ホタホタと燃える静かな火に、あたたかな若い肉体を、おだやかに。つつがなく、生命の自然そのままに持っていようとすることの方が――那智の巌下に千尺の飛瀑をこらえているよりは、どんなに、苦しいか、むずかしいか。――それが、わからない源五兵衛では、自分の道づれとして、生涯をともにするのも、心もとないことではあると、ひそかに、思ってでもいるらしい容子であった。
この、東山の草庵に、起居してからも、夜半、ふと眼がさめる癖がついたのは、家を出る日、取りすがる幼な子を、縁の上から蹴落した――あの一せつなの泣き声に――いつも呼び醒まされるためである。