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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

四白とやらは、よくないそうじゃの』

『俗説です。とるにも足らぬ……』いいかけて、忠盛は、なぜ自分はこう自分をあざむけない性分かと、すぐ悔いを覚えたものの――『これほどな馬数にも、あれに勝るは見うけません。容貌、眸、尾長など、名馬の相を、ことごとくそなえたものです』といってしまった。

上皇には、ふたたび迷うお顔つきに見えた。五月には、院の馬で、朝廷方を負かしてやりたいのだ。それには、四白の青毛をと思われたのだが、忌みごとをひどくおそれる貴族的な通有性では、上皇も同じであられた。

『もし、いとど惜しゅう思し召すなら、青毛のみは、院の御門を避けて、忠盛が家の厩に、その日まで、つなぎ置くもよろしゅうございまする。わたくしは、おろかないい伝えなどは、さらさら気にかけませぬ者ゆえ』

忠盛は、公卿たちのてまえと、自分のことばの責任上、そう考えた通りをいった。

『なるほど。それならば、障りもなかろ。そちの手にあずかって、加茂の日までに、脚ならしも、充分にしておくがよい』

――還御となった。

その日の、青毛のうわさは、翌日にはもう、院中にかしましかった。忠盛にこころよからざる公卿は、以前から多いのだ。