轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
家中は残らず旅装をととのえ終った。荷梱は馬の背に、弓道具は扈従の手や肩に、そして先発から供の末まで、門外に出て、すでに隊伍を立てていた。
雨雲の低い空を望んで、頻りに馬が嘶き合う。供頭は、駈け歩きながら、
「雨具は用意したか」
と、注意をくばり、ふたたび門内を覗いて、
「こよいは、星明りだにない。それに降り出せば、悪路となろう。松明はすこしよけいに用意されたがよいぞ」
と、誰やらへ呶鳴っていた。
職責上、供頭の声だけが、やや張りを帯びているだけで、鉛のように重くるしいものが、家中全体をおおっていた。箇々に見ても、さむらい達の面は、こよいの空のように暗澹としていた。険をふくんだ眸、涙をたたえた眸、悲痛な光を潜めた眸、悶々としてものいわぬ眸。
――たれの目もかれの目も、決して、平静ではない。
そのうちに、光秀の声がした。大玄関前の駒寄を離れて、一塊の騎馬の影が此方へ流れて来る。
「なんの坂本までは、見えているほど近い距離。一雨あるとも、一鞭の間に着いてしまう。――懸念すな。懸念すな」
案外明るい主人の声を聞いて供の面々は、却って意外な気がした。
この日の夕方。