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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
いまし方これへ、信長の三男信孝と丹羽長秀の書をもたらして来た大坂表からの使いである。
その神戸信孝、丹羽五郎左衛門、津田信澄などの一軍は信長に先だって、諸般の軍備をととのえ、明朝兵船で住吉からまず阿波へ渡ることになっている。――その報告やら、また数日前に、大坂を去って堺へ入った旅行中の徳川家康の様子をも併わせて告げて来たものだった。
「では、お暇をいただきます」
使者は信長へ、また信長と対座していた織田家の嫡子信忠へ向っても、はるかに礼をして、それから少し膝の向きをかえ、なお一段低い所にいる所司代の村井長門守へも、同様に辞儀をしてからようやく退出して行く。
信長は、急に、気づいたように、暮色を見まわして、
「暮れたぞ。西窓のすだれを捲け」
と、小姓にいい、
「お汝の宿所も暑いか」
と、信忠にきいた。
信忠は父よりすこし先に入洛して、二条城のそばの妙覚寺を宿舎としていた。父が入洛の夕も、きのうも今日もここへ詰めて、いささか疲れぎみでもある。で、きょうはもう暇を告げる考えでいたが、それを犒う心か、信長が、
「こよいは内々で静かに茶でも喫もう。きのう一昨日の両日は夜まで客だった。