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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

余りに閑なきは精神の貧困を来す。遊んでゆけ、おもしろい人間にひきあわせてやる」

と引き止めるまま、否みもならず侍していた。

けれど、子としてのわがままをもしいわして貰えるなら、信忠はこうも云いたかったであろう。――それがしは生年二十六歳、父の如くにはまだ茶も解しきれません。わけてこの戦国に閑を偸んで悠々風雅のみこれ事としている茶人なるものを忌むこと甚だしいのです。折角おひきあわせて戴いても、茶人ではありがたくもありません。正直、一刻もはやく、弟信孝にもおくれぬよう、中国の戦陣に立ちたい武者心が逸り立つのみであります――と。

長門守も、きょうは所司代としてではなく、春長軒という、一箇の知人として、信長に招かれたらしいが、やはりどこか君臣という固さと職掌の範囲から解かれず、座談もどこかぎごちない。

このぎごちなさが、信長の嫌いの一つである。兵馬倥偬の日常、政務の繁劇と、門客の出入りと、睡眠不足と、あらゆる公人的な規矩から寸分でも解かれて、ほっと一息つく間に、こういう光秀的な慇懃に対していると遣りきれない気がしてくるらしい。

すると、ふと、秀吉が思い出されてくる。