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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
であった筈のお伽噺の家の気分は、すっかり趣を変えてしまって、部屋へ這入るとそう云う場所に特有な、むうッと鼻を衝くような臭いがする。私もこれには閉口して、
「さあさあ、僕が掃除をしてやるから、お前は庭へ出ておいで」
と、掃いたりハタいたりして見たこともありますけれど、ハタけばハタくほどごみが出て来るばかりでなく、余り散らかり過ぎているので、片附けたくとも手の附けようがないのでした。
これでは仕方がないと云うので、二三度女中を雇ったこともありましたが、来る女中も来る女中もみんな呆れて帰ってしまって、五日と辛抱しているものはありませんでした。第一初めからそう云う積りはなかったので、女中が来ても寝るところがありません。そこへ持って来て私たちの方でも不遠慮ないちゃつきが出来なくなって、ちょっと二人でふざけるのにも何だか窮屈な思いをする。ナオミは人手が殖えたとなると、いよいよ横着を発揮して、横のものを縦にもしないで、一々女中をコキ使います。そして相変らず「何屋へ行って何を注文して来い」と、却って前より便利になっただけ、余計贅沢を並べます。結局女中というものは非常に不経済でもあり、われわれの「遊び」