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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
………そうして君は、熊谷とそうなっているのをいつ発見したんです?」
「それはあの、雨の降った晩に此処で雑魚寝をしたことがあったでしょう。あの晩僕は気がついたんです。………あの晩、僕はあなたにほんとうに同情しました。あの時の二人のずうずうしい態度は、どうしたってただの間柄ではないと思えましたからね。僕は自分が嫉妬を感じれば感じるほど、あなたの気持をお察しすることが出来たんです」
「じゃ、あの晩君が気がついたと云うのは、二人の態度から推し測って、想像したと云うだけの………」
「いいえ、そうじゃありません、その想像を確かめる事実があったんです。明け方、あなたは寝ていらしって御存じなかったようでしたが、僕は眠られなかったので、二人が接吻するところを、うとうとしながら見ていたのです」
「ナオミは君に見られたことを、知っているのでしょうか?」
「ええ、知っています。僕はその後ナオミさんに話したんです。そして是非とも熊谷と切れてくれろと云ったんです。僕はおもちゃにされるのは厭だ、こうなった以上ナオミさんを貰わなければ………」
「貰わなければ?………」
「ああ、そうでした、僕はあなたに二人の恋を打ち明けて、ナオミさんを自分の妻に貰い受けるつもりでした。