轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
そう云うとナオミは、仕方なしにうッすりと眼瞼を開きましたが、睫毛の蔭から纔かに此方を覗いている細い眼つきは、その表情を一層冷酷なものにしました。
「え? お前は己が嫌いなのかよ? そうならそうと云っておくれ。………」
「なぜそんなことを尋ねるの?………」
「己には大概、お前の素振りで分っているんだ。この頃の己たちは喧嘩こそしないが、心の底では互に鎬を削っている。これでも己たちは夫婦だろうか?」
「あたしは鎬を削ってやしない、あなたこそ削っているんじゃないの」
「それはお互様だと思う。お前の態度が己に安心を与えないから、己の方でもつい疑いの眼を以て………」
「ふん」
とナオミは、その鼻先の皮肉な笑いで私の言葉を打ッ切ってしまって、
「じゃあ聞きますが、あたしの態度に何か怪しい所があるの? あるなら証拠を見せて頂戴」
「そりゃ、証拠と云ってはありゃしないが、………」
「証拠がないのに疑ぐるなんて、それはあなたが無理じゃないの。あなたがあたしを信用しないで、妻としての自由も権利も与えないで置きながら、夫婦らしくしようとしたってそりゃ駄目だわ。ねえ、譲治さん、あなたはあたしが何も知らずにいると思って? 人の手紙を内証で読んだり、探偵みたいに跡をつけたり、………あたしちゃんと知っているのよ」