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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页

青空文庫

と、ナオミは何処までも強気に出る。そして殆ど心配などはしていないように、平気な顔で冗談を云ったり、気焔を吐いたり、英語交りにまくし立てたり、ハイカラな衣裳や持ち物などを見せびらかしたり、まるで貴族のお嬢様が貧民窟を訪れたように、威張り散らしていやしないか。………

しかしナオミが何と云っても、とにかく事件が事件であるから、早速誰かが飛んで来なければならない筈だが、………若し当人が「詫まりになんか行かない」と云うなら、姉か兄貴が代りにやって来るところだが、………それともナオミの親兄弟は誰も親身にナオミのことを案じてなんぞいないのだろうか? ちょうどナオミが彼等に対して冷淡なように、彼等も昔からナオミに就いては何の責任も負わなかった。「あの児のことは一切お任せします」と、十五の娘を此方へ預けッ放しにして、どうでも勝手にしてくれと云う態度だった。だから今度もナオミのしたい放題にさせて、打ッちゃらかして置くのだろうか? それならそれで荷物だけでも受け取りに来そうなものではないか。「帰ったら直ぐに使を寄越せ、荷物はみんな渡してやるから」とそう云ってやったのに、未だに誰も来ないと云うのはどうしたんだろう? 着換えの衣類や手周りの物は一と通り持って行ったけれど、彼女の「命から二番目」