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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
そして顔だちばかりでなく、彼女を素っ裸にして見ると、その体つきが一層西洋人臭いのですが、それは勿論後になってから分ったことで、その時分には私もそこまでは知りませんでした。ただおぼろげに、きっとああ云うスタイルなら手足の恰好も悪くはなかろうと、着物の着こなし工合から想像していただけでした。
一体十五六の少女の気持と云うものは、肉親の親か姉妹ででもなければ、なかなか分りにくいものです。だからカフエエにいた頃のナオミの性質がどんなだったかと云われると、どうも私には明瞭な答えが出来ません。恐らくナオミ自身にしたって、あの頃はただ何事も夢中で過したと云うだけでしょう。が、ハタから見た感じを云えば、孰方かと云うと、陰鬱な、無口な児のように思えました。顔色なども少し青みを帯びていて、譬えばこう、無色透明な板ガラスを何枚も重ねたような、深く沈んだ色合をしていて、健康そうではありませんでした。これは一つにはまだ奉公に来たてだったので、外の女給のようにお白粉もつけず、お客や朋輩にも馴染がうすく、隅の方に小さくなって黙ってチョコチョコ働いていたものだから、そんな風に見えたのでしょう。