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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
「大阪朝日新聞」1924(大正13)年3月~5月<br>「女性」1924(大正13)年11月~1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 179,399 字 · 353 页
夜会がある時は殊に大変で、風呂場へ行って、アマに手伝わせて、体じゅうへお白粉を塗ります。
ナオミの友達はよく変りました。浜田や熊谷はあれからふッつり出入りをしなくなってしまって、一と頃は例のマッカネルがお気に入りのようでしたが、間もなく彼に代った者は、デュガンと云う男でした。デュガンの次には、ユスタスと云う友達が出来ました。このユスタスと云う男は、マッカネル以上に不愉快な奴で、ナオミの御機嫌を取ることが実に上手で、一度私は、腹立ち紛れに、舞蹈会の時此奴を打ん殴ったことがあります。すると大変な騒ぎになって、ナオミはユスタスの加勢をして「気違い!」と云って私を罵る。私はいよいよ猛り狂って、ユスタスを追い廻す。みんなが私を抱き止めて「ジョージ! ジョージ!」と大声で叫ぶ。―――私の名前は譲治ですが、西洋人は George の積りで「ジョージ」「ジョージ」と呼ぶのです。―――そんなことから、結局ユスタスは私の家へ来ないようになりましたが、同時に私も、又ナオミから新しい条件を持ち出され、それに服従することになってしまいました。
ユスタスの後にも、第二第三のユスタスが出来たことは勿論ですが、今では私は、我ながら不思議に思うくらい大人しいものです。