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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
そうして彼女らは、白い砂のうえに黒い点々になって行く男たちの一行を、ながい間、伸びあがり、小手をかざして眺めていた。
イシカリの河口では松岡長吉の挨拶があった。もうすっかり繃帯は取れていたが、彼の顔色にはすぐれないものがあった。傷の疼みは、いろいろな形で、彼の精神にもひびいたのかも知れない。彼とは二つの車輪のような間柄にある門田与太郎もそこで立ちどまった。戸田老人も腰をかがめて長い眉毛をおさえた。
イシカリの街をぬけて、やがてゼニバコの街道にさしかかった。そのあたりが、およそ、日帰りの出来る最大限度であったろう。関重之進たち初老の比較的元気な連中が足を停め、そして離れて行く主君の一行をぼんやり見送っていた。霜にうたれた枯れ草のかげに人々の姿は消えて行くのである。最後に附きそっているのは、オダルの港まで、彼らの主君が無事に船に乗りこむのを見とどけたいとする数人であった。
す枯れた原野の上に風が海から吹きつけていた。「お早いお帰りをお待ちしておりますです」と云い、「申すまでもなく」と答えてはいたが、行くものも送るものも、目先にちらつく冬の季節をちゃんと知っていた。