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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
その頭立ったものが見て見ぬふりをしたのは、それはあからさまに、阿賀妻に対する反抗の態度であった。即ち阿賀妻に対する反対というのは、これは、北海道へ移住することを拒否することである。そのためにはどうしても、阿賀妻と主君とを切りはなさなければならない。阿賀妻の計画の内部から、その中心の思想になっている主君邦夷をひきぬかなければならない。その人を自分らの考えの中心に据えねばならぬ――これが最初でしかも最後の、たった一つの手段のように思われたのだ。
ここは文字通り、先祖代々が生れて死んで、何度となくそれを繰りかえして、今は自分どもに仏まつりの番がまわって来ている土地だ。やがて自分も、因縁によって仏にかえるだろう。そのとき菩提寺もないところでどうして成仏出来るか。出来ることならこの土地を出たくないのだ。思いきれないのだ。
――その気持が、反阿賀妻の空気がひろがることを許していた。
――それを、その空気の先端と今し方衝突していながら、ついに底まで徹しないで別れて了った。勝を制していなければ、つまりそれは敗けである。
「敗残ここに至って何の策か有らん、蓑笠独耕石水浜」