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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页

青空文庫

そこで閣議は、この意見を上程した。列席のなかには参議の黒田清隆もいた。しかし外務卿は行政長官ではあったが国務大臣では無いというのだ。彼の出席がなくとも話はすすめられるのだ。その日から政府は樺太のことに関する限り全然熱意をうしなったのである。そうして、岩倉大使らの洋行となった。彼らの帰朝するまで向後の二カ年は、内外の政治に決して改革を加えないこと、並びに奏任以上の官吏をむやみに更迭しないことを留守のものに約束させた。

開拓使だけがこの例外にあった。アメリカ技師は、何を考えているか皆目わからないような表情をして活躍をはじめたのである。洞窟のような眼窩の奥には、まばたきも見えぬ碧い眼が凝然としていた。血を吹きそうな広い額のまン中からぐいと隆起した鼻梁が、握るにあまるほど豊富な亜麻色の口ひげをさッと八文字にわけていた。いかにも噛む力の強そうな小さな顎がまッ赤な下唇をかすかに見せている。函のようなそのものの頭蓋のなかにはどんな智慧がはいっているのか、考えてみることも出来ない。見あげるようなその巨躯に圧倒され、眩惑されていた。彼らの云うところにむかって、さて、それは――と、あれこれ思いめぐらす足がかりがこちらには何一つないのであった。