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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
阿賀妻に一切をゆだね、先ず踏査を試みることになった。指名を命じられた彼は、応急の処方も心得ている戸田老人、先ごろも行を共にした大野順平、それから玉目三郎どのにお願い申すと云った。案内人一人荷物を運ぶ人夫二人。
五月五日の早朝、方向を南東にとって出発した。絵図面の上での目測はざっと十里。山越えをして行ったとしても二日の行程で足りよう。
歩けど歩けど一向にそれらしい平地は見あたらなかった。その日は一日歩きつめた。次の日も一日いっぱい歩いた。そうして三日目になっていたのである。
ほの暗くなった谷峡は、またたく間に闇に埋められた。砂の上に立った阿賀妻は、前に行く案内人を呼び止めた。
「おい、ちょっと待て」
次第にこの案内人に信用が出来なくなったのだ。第二に彼が頼みにしていたのは磁石であった。図面はこの案内人も云う通り、奥にはいれば想像で描かれている不完全なものであった。あとは自分の直感に頼るだけである。
「どういうことになっているんだ?」とつづけて云った。
「それを、あッしも今考えているところだ」
「なに?」
後のものは、そこの渓流をこちら岸に横切っていた。彼らの脛で掻きまわされた水がじゃぶじゃぶと音立てて案内人の言葉を消してしまった。