轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
堰をきって溢れだすように、時の勢いに乗った彼らのすさまじい進出は、海浜の草小屋に焦慮していた阿賀妻らの耳にもごうごうと聞えていた。
ヨモギにからまって野エンドウの蔓が紫の花をひらき、ハマナスが赤い花托をカヤの間に伏せていた。野はそこで切れて、路は砂浜に凹むのである。阿賀妻は足をとめて振りかえった。彼らの草葺小屋との間には、ナラやヤナギの灌木がつづいていた。土地が悪いため、海風が吹きつけるため、永久に育ち得ないそのままの姿で立っているような、低くて節くれ立った矮樹の群であった。
誰の姿も見えなかったが、誰にともなく手をあげて挨拶をした。それから砂の路にとび下りた。さくりさくりと踏みつけて砂丘の裾をまがって行った。ひろい浜べの高低起伏は、砂の山や谷である。海岸づたいの路は、ときには砂丘のかげにかくれ、浪に洗われた。
どーん、どーん――と浪はうちよせていた。音のあいまに、阿賀妻は自分を呼ぶ声を聞いたように思った。ぎょろりと周囲を睨めまわした。おのずから身構えが出来ていた。そして、砂の凹みに足を進めたとき、彼はその目の前に跼っている若い女を発見した。一瞬眼をこらして見つめた。