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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
での民主都市とめずらしがられているウィーンの模型じみた舞台をとおって、ベルリンで伸子が消えない印象を与えられたのは、カール・リープクネヒト館前の広場のいくところにも、白い輪じるしを記念にのこしている労働者殺戮のあとであった。日本から毒ガス研究のために派遣されている津山進治郎の思想の上にてりかえしている、ドイツの再武装、ファシズムの進行はあからさまだった。このパリからロンドンへ向おうとする伸子の心には、音楽でいうクレッシェンドのように次第に強くなりまさりつつある探究の情熱があった。伸子は、ロンドンをしっかりつかみたいと思った。そのためにはもう一歩深くこのパリの生活を、と――
半月ばかり前、伸子と素子とは日本で面識のあった蜂谷良作に思いがけずパリで出会った。蜂谷良作は経済が専門であった。伸子とすればロンドン行きをのばしたこの一週間のうちに、蜂谷にならきけるだろうと思われることを、あれもこれもと持っていたのだった。コンミューンの歴史をもっているのに、なぜフランスの共産党は、現在の程度の存在でしかないのだろうか。絶えず問題となっている統一労働総同盟と労働総同盟との関係はどういうことなのだろう。