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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
ソヴェト同盟の『鎌と槌』だっても――」
芸術的なところがあるという性格でない蜂谷はだまって二人の女の話をきいていた。外国生活の多面さとして、映画や芝居もときどきは観ているというわけらしかった。
伸子と素子とがもう二三日でロンドンへ立つところだという話から、蜂谷は、そのカフェーのコバルトと黄色に塗られた椅子の上で厚い胸を張るようにして、
「僕もそろそろどっかへ動き出したくもあるなあ」
と云った。
「じゃ、ソヴェトへいらっしゃい!」
伸子は、こだまするように云って、あながち出まかせばかりではない眼色で蜂谷を見た。
「わたし、思うとおりを云ってもいいかしら」
「ああ、もちろんさ。――何です?」
「わたしは、ベルリンでお医者の会に出たときそう思ったし、あなたに会ってからも思うんだけれど――どうして、みなさん、ソヴェトへ行こうとしないんでしょう。経済をやるあなたがいつまでもフランスにばかりいるなんて、わからない。中国へ行って来ている人なら、なおのこと、ソヴェトへは行って見たいだろうと思うのに――」
それについて知らないものの大胆さで、伸子は、
「フランスに、本気で研究するような新しい問題があるのかしら」