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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
やっぱり同じ考えにおちた。
「とんだ迷惑をかけて、すまないなあ」
と云いながら、蜂谷は七階まで二人の女のあとについてのぼった。
「ともかく、ちょいとこっちで休みましょう。それから、あなたの落つき場をちゃんとするから」
伸子の部屋にはいった。屋根裏部屋には、宵じゅうしめこまれていた夏の夜の暑気がこもっている。伸子は、露台のガラス戸をいっぱいにあけた。そして椅子を露台の上へもち出した。土曜日と日曜日の晩だけは夜どおし灯っているエッフェル塔のイルミネーションが、遠い空の中で今夜もシトロエン・シトロエン・6シリンダー・6・6と休みなくまたたいている。
蜂谷良作は、露台の欄干に肱をかけ、遠くエッフェル塔をたてに走っては光っている字を眺めた。
「久しぶりだなあ、パリの夜の景色――やっぱり、いいな」
「クラマールって、そんなに淋しいところ?」
「まわりが田舎ですからね。こんな都会の夜の気分は全然ないですよ。その代り歩きまわるにはいいけれども」
廊下ごしの自分の部屋に行っていた素子が、ねまきや枕や洗面道具などを腕にかかえて、伸子の方へ運んで来た。蜂谷が椅子から立ち上った。