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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
――この一句のうちに、千万言にまさる真実があった。これこそ人類に新しくかちとられるべき美ではないだろうか。すべての働くものに学問を――真実の科学を。いつわりなく社会の現実を追求して、それを発展させる力をもつ学問を。――
売家に出された労働学校の残務整理をして、ふとった悲しそうな顔を頬杖に支えている男に、伸子はトインビー・ホールを訪問したと話した。そして、あなたのところでも、もしあすこと同じような学科を教育していたのなら、卒業生たちがマクドナルド政府に便利な召使になるのは明瞭だと思います。トインビー・ホールの二種類の食堂がそれを語っています、と云った。肥った男は眠たそうにしていた瞼をあげて、伸子の顔を見直した。あなたは、その二つの食堂を見ましたか? 見ました。それで――あなたの気に入らなかったですか? 伸子は、ああいうやりかたは、大戦前まではある意味があったのでしょう。でも、それでは余り古いです、と云った。肥った男は、二つの指で下唇をつまむようにしてしばらく黙って、考えこんでいた。やがて、正直そうなふとった顔に一層悲しそうな表情を浮べながら、多分それがほんとうでしょう、と立ち上り、伸子とつれ立って重い足どりで看板おろしをしている入口へ出た。