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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
四五人来あわせている人々のなかで、一番年長のひとが、和一郎の美術学校時代の美術史の教授だった。ひかえめに、ロンドンにいる和一郎の噂が出た。磯崎恭介に近い年かっこうのほかの人たちは、みんな画家たちだった。伸子がその人々と初対面であり、こういう場合口かずも少いのは自然なことであったが、磯崎恭介そのひとが、これらの人々との間に、果してどれだけうちとけた親しいつきあいをもっていたのだろうか。異境で急死した人の女の友達の一人としてその座に加っていて、伸子がそう思わずにいられない雰囲気があった。パリの日本人から自分を守って努力していたような磯崎恭介。その人の意志にかかわらず突然おこった死。ここにいる人たちは、ほかの誰よりちかしい友人たちではあろうけれども、そこに来ている四五人の人々の間で磯崎についての思い出が語られるでもなかった。友人たちの心から話し出されるような逸話をのこしている磯崎でもないらしかった。
しばらくして、須美子も寝室から出て来てその席につらなった。彼女は半円にかけている客たちに向って、ひとりだけ離れて一つの椅子にかけた。
だまってかけている人々の上から、夜ふけの電燈がてらしている。