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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
と話しはじめた。
「あなたがパリへ来られたときいて、ぜひ一度、それについて、いろいろじかにおききしたいことがあって――それで実はお邪魔したんです」
わきにいるつや子が、そういう話には妨げになるという素振りだった。それを伸子は無視した。
「――大使館のかたが、わたしに入国許可の手つづきをおききになるのなんて、何だかおかしい」
そういう伸子の声に、笑いにかくされている批評がこもった。
「そんなことはもちろんわかっているんです。そうじゃあなく――僕はそうじゃない方法でモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ入りたいんです」
非合法の方法でモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ行きたいという意味らしかった。何のために、そんなことを伸子にきくのだろう。伸子にそんなことを訊くような組織的でない生活をしているひとに、非合法でモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ行く必要のあろう道理はない、と思えるのだった。
「わたしにおききになるのは、見当ちがいです。わたしなんか、ヴィザもヴィザ、大したヴィザで、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へは行ったんですから――藤堂駿平の紹介で……」