轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
蜂谷は、そういう伸子をいくらか解せなそうに、
「僕の方は、ほんとにかまわないんですよ」
額によこ皺をよせるようにして伸子をみた。
「一人じゃ、交渉なんか、めんどうくさいでしょう?」
伸子の言葉が不自由なのを、蜂谷はそういう表現で云った。
「ありがとう。――でも、また無駄足だとわるいから……」
何となし伸子にはそんな予感があった。
「そんなことは、室さがしにつきものだ。ともかく、あした、あなたのいい時間によりましょう」
キャルディネ通りの下宿の経営者はふるい軍人あがりらしい老人であった。彼が、ともかくうちの庭を見て下さいと、蜂谷と伸子とを、いきなり庭へ案内したのは、かしこいことだった。というのは、こぢんまりした三階の建物に沿ってしつらえられている生粋にフランス風の小砂利をしいた細長い庭こそ、その下宿の気質を語っていたから。奥が深いかわり間口が狭い庭に、夏の日をしのぎよくするための葡萄棚がつくられていて、建物の入口の横から庭へはいる境は、低い植込みだった。手入れのゆきとどいた小砂利の上には、白く塗った鉄の庭園用テーブルと同じ椅子が三つ四つおかれて、その一つに、黒ビロードの部屋着を羽織った髭の白い老人が、小型の本を片手にもってよんでいた。