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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
一緒にくらす愛するものがあったら、こんなところに暮してみるのも面白かろう。町すじの寂しい人気なさ。見すてられているようなアトリエ。男と女とが棲むのでなければ、ここでの生活の愉しさはかもし出されようがない。
蜂谷良作と伸子とは、小扉をあけてアトリエに入ったところにたたずんだまま、しばらく黙ってその辺を見まわしていた。
「――どう? そろそろ行きましょうか」
そう云ったのは伸子だった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で、あんなに部屋さがしをした。だけれども、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)での部屋さがしは、ほんとにいそがしい生活と生活との間に見出そうとする空間の問題のようで、そこに住むのが男であろうと、女であろうと、第一に考えられるのは、そこが健康に適しているかいないかということだけだった。いまこのアトリエを見まわしている伸子の心に湧いたような空想をおこさせた場所は、どこにもなかった。それは、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の生活そのものが、沸騰し、充実した活動にみたされているためにそうなのだろうか。それとも、伸子が素子と一緒に暮していた、そのせいだろうか。