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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「――もしお母さまが相談したら、お姉さま、どこか別のところを考えてよ、ね?」
「わたしは、はじめっから尼さん学校は賛成じゃなかったんだもの」
「あんなところへまた行くんなら、このひと、不良少女になっちゃう」
不良少女というものを、つや子は晩熟な女の子らしく、わるい女の子というほどの内容で云っているのだったが、それをいうとき、つや子の、がっしりと四角い顎をもっているきつい顔の上に、旅券に貼ってある小型写真にうつっているような、けわしく、暗い、一途な表情があらわれた。
休日らしい暮しがつづいたのは、二日か三日のことであった。
マダム・ラゴンデールの授業をうけにホテルへ戻っていた伸子がかえって来ると、ひとりで留守をしていたつや子が、
「こまっちゃった!」
伸子の前へ来て立った。
「どうしたの」
「マダム・ルセールったら、洗濯にやってくれって、はっきり云ってたのんでたのに、メルシ、メルシってこのひとのスリップをもって帰っちゃった」
「どんなスリップ?」
「いちばん御秘蔵の」
うすいピンクのクレープに、幅のひろいきれいなレースつきというものだった。
「このひと、ちゃんと字引きひいて、云ったのに――」