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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
むしろ情愛的に云われたもらい泣きという表現は、多計代につきもどされて伸子の心に帰ったとき、とげとなって伸子を刺した。多計代と伸子とは、そのこころもちのままペレールの家を出て北停車場へ行き、その心のまま、プラットフォームの上と下とで、うすぐらいガラス越しの顔を見合った。そして多計代はパリを去った。良人につれられて、というよりも良人と末娘とをひきつれて。
その日の、午後七時に、磯崎須美子もリオン停車場から出発してマルセーユへ向った。
空屋になったペレールの家へ、伸子は、蜂谷良作と野沢義二の三人づれで戻った。親たちがけさまで使っていた敷布類やテーブル・クローズなどが洗濯に出すために畳まれて、人気ない食堂のテーブルの上にきちんと置かれていた。マダム・ルセールは、もう帰ってしまっていない。
伸子がこれから引越してゆくクラマールの下宿は、住居とは別に、かなり大きい洗濯屋をやっているのだそうだった。そちらへ帰る蜂谷良作が、シーツ類を包んだ重い紙包みをあずかった。野沢義二とはペレール広場で、蜂谷良作とは、デュト街へ曲るヴォージラールの角でわかれて、伸子は、磯崎須美子の住居へ行った。