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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
彼の日頃からのそうした話しぶりに伸子は野沢の天質の特色を感じているのだった。野沢義二の専門は哲学であったが、彼は詩作もした。フランスの有名な反戦作家のルネ・マルチネの家の私的な団欒に伸子をつれて行ったのも野沢であった。
「ソヴェトが、こんどの五ヵ年計画をほんとに実現できれば、たしかに大した仕事だな。――おそらく、やるんだろう」
蜂谷良作は、チューブからねっとりした何かが押し出されて出て来るような風に話した。
「しかし、大体、世界じゅうが第一次大戦後は計画経済の方向に向ってはいるんだがね――資本主義を何とか救おうとすれば、その方向しかないのは、誰にもわかって来ているんだ」
書物や紙ばさみや新聞がその上にちらかっている野沢の大型デスクのはじにもえているアルコール・ランプのよこで、伸子は、ズボンのポケットに両手を入れて話している蜂谷良作を見つめた。そんなのって、おかしい! 伸子の心が異議をとなえた。社会主義の計画生産と資本主義を救うための計画生産とが、どうして同じ本質の「計画生産」であり得るのだろう。
「蜂谷さん、この間、資本・労働協定の話のとき、あなたは、資本主義生産に、ほんとの合理性はあり得ないんだって教えて下さったことよ」