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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「ね、伸子さん、教えて下さってもよくはない? わたし気味がわるいわ、イマージュなんて……」

「わたしにもよくわからないんだけれど、蜂谷さんがベルネのところにいらしたときは柴垣さんや皆さん、ちょくちょくあすこへ遊びにいらしてたんじゃないの?」

「ええ、宅もフランシーヌを描いたりしていましたわ」

「わたしが社交的でないからフランシーヌ淋しいんでしょう……」

細君は、ちょっと考えるようにして、

「ああ、ね。若い娘さんとしてはそうかもしれないわね」

そのまま数歩行って、彼女は急に、

「だって、あの娘さん、まだ子供じゃありませんか、柄こそ大きいけれど……こっちのひと、早熟だわ」

抗議をふくんで、体にあわせては太いような声を出した。それで伸子は感じるのだった。柴垣や亀田たちは、もしかしたら細君をつれてよりもより度々、男たちだけでフランシーヌを訪問したこともあったのだろうと。

フランシーヌの小さい細工を蜂谷良作は不快がった。

「ああいう陰性でしめっぽい娘は、にがてだ。困るな、どうも。――混乱ばかりおこって」

ひとくみの男女の感覚の嵐が彼女の身ぢかいところでそよいでいるとき、どうしてフランシーヌに冷静がもとめられよう。