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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
私のところでは、思いがけないことがおこったのでした。弟が急に亡くなりました。急に――おわかりになりますでしょうか。伸子さんには分って頂けることと思います。
伸子さんには分って頂ける――弟が急に死んだ。それは保が急に死んだように死んだと解釈するしかない文面だった。蕗子の弟――どうして自殺したのだろう。伸子さんには分って頂けるという、ふくみの中には、その原因がやっぱり保のように思想的なものだということもほのめかされていると思える。伸子は、喉もとへこぶがあがって来て、声がつまった。
「あなた、蕗子さんに何とか云ってあげた?」
「書きようないじゃないか。二人にあてて来ているのに――ぶこは帰っていないなんて書けるもんか」
「別のことだわ、それとこれと」
素子は、何とこまかく、伸子への懲罰を用意していたことだろう。伸子は二重におどろきを感じながら蕗子の手紙をよみつづけた。蕗子の弟は洋画の勉強をしていた。姉のひいき目からばかりでなく嘱望されて居りました。彼にも現代の芸術家の苦悩が襲ったのでした。芸術上の理論について。彼は芸術至上主義でいられない自分と、他の理論との間で、墜落いたしました。