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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

ウィーンで買ったあの外套を売ったって――伸子はライラック色の表に、格子の裏をつけたトレンチ・コートを考えた。あの薄色のドレッシーな短靴を売ったって――絹の靴下と靴を売れば、質素な伸子たちのモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)生活の三ヵ月はもてた。そんなことをしなくても、もしかしたら東洋語学校で日本文学の講義ぐらい、できるようになるかもしれない――

考えながら雑誌をいじっていた伸子は、ふと、そこにのせられている一つの文芸評論に目をひかれた。相川良之介の生涯と文学とにふれて書かれている評論であった。その主題が、伸子の関心をひいた。これまで一度もその名を見たことのない石田重吉というその評論の筆者は、文章のはじめに書いていた。この作家の「透徹した理智の世界」に、私は漠然、繊細な神経と人生に対する冷眼を感じただけであった、と。伸子は、相川良之介について自分が感じたように、いわゆる野暮に感じる人もいたことをおもしろく思った。「私は『余りにも人工的な、文人的な』という漠然とした印象より外のものを多く持っていなかった」ところが「一九二七年度に著しかったこの『文人』