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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「あなた、これ、読んだ?」

「――何かあるだろう?」

素子の心にも止る何かがあったのだ。

「まだ学生だね」

学生であるにしろ、石田重吉は「大導寺信輔の半生」にふれて、伸子に自分の浅い批評をきまりわるく思わせる分析をしていた。相川良之介の特色であった知識に対する貪欲とも云い得る強烈な欲望、伸子が衒学的だと感じて、常に反撥したその欲望は、日本の中流下層階級に属して、この社会に何の伝統的な生活手段も持っていなかった彼の、個人的特性であるとともに、知識は相川良之介にとって生活上の武器であり、生活手段であり、享楽であったと、評論は語った。そこには、筆者のなみなみならず切実な理解がこめられているようでもあった。

石田重吉の評論には、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)でそれをよんでいる伸子としてかすかな居心地わるさを感じさせられるところもないではなかった。それは、プロレタリアートは時代の先端を壮烈な情熱をもって進んでいる。という文章につづいて、しかも我々の前には、過渡時代の影がなお巨体を横えている。長い過去を通じて、我々に情緒上の感化を与えて来た「昨日の文学も」