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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
西洋のにおいは、西洋菓子のにおいそっくりだった。めったにたべることのない、風月の木箱にはいった、きれいな、銀の粒々で飾られた西洋菓子のにおいと同じように、軽くて、甘くて、ツンとしたところのある匂いがした。
こわいような懐しいような支那についての伸子の感じは、その後、さまざまの内容を加えた。昔の支那の詩や「絹の道」の物語、絵画・陶器などの豊富な立派さが伸子の生活にいくらかずつ入って来るにつれ、伸子は、昔の支那、そして現代の中国というものに不断の関心をひかれて来ていた。そこには、日本で想像されないような大規模な東洋の豊饒さと荒涼さ、人間生活の人為的なゆたかさと赤裸々の窮乏とがむき出されているように思えているのだった。
日本にいたとき、わざわざ九段下の支那ものを扱っている店へ行って、支那やきの六角火鉢と碧色の毛氈を買ったのは素子だった。そんな趣味をもっている素子が、支那女と云われると、分別を失って逆上し、くやしがる。
日本人のきもちには日清戦争以来、中国人に近づいて暮しながらそれをばかにしている気もちがある。日本に来ている留学生に対しても、商人にたいしても。