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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

伸子は、立派な外套を着ていないモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の外国人の一人として、その事実を感じている。でも、そういう鋭さはむしろ小さな部分としての成功だった。

「もしかしたら、マヤコフスキーにもメイエルホリドにも、何となし脚本の空虚さがわかっていて、心配だったのかもしれないわね。だから、せいぜい目先の新しいまわり舞台を工夫したり高い櫓をくみ立てたりしたのかもしれない。――でも、結局、それだけじゃ……」

例のメイエルホリドのこけおどしにすぎなかった。そして、メイエルホリドのこけおどしは、この場合ソヴェトの演劇の弱さとして現れかかっている。雪の凍っている並木道の間を、素子と橇に合い乗りで帰りながら、伸子はひと晩つまらない芝居を観てすごした不満というにしては、こだわるところのある、いらだたしさのようなものを感じた。

「ここで社会主義があんな象徴主義で扱われるなんて――」

伸子が腹立たしいような抗議を感じるのは、そこだった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の生活に、社会主義は目に見えるものであり、触れ得るものであり、生きている現実であるからこそ、伸子はこんなにモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の沸騰を愛しているのに。