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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

そんな意味だった。伸子は、そういう外国人のうちに自分たちが数えられるとは感じなかった。全く、いろんな外国人がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいる。――たとえば藤原威夫のような。ああいう人が、立派なクワルティーラにいる。だからそういう処置も当然考えられることだ。そう思って読んだだけだった。

「外国人は一般に個人のクワルティーラではうけいれないことにきめられました」

ルケアーノフがそう云ったとき、伸子は、自分で予想もしていなかった悲しさにうたれた。深く傷つけられた感じだった。伸子たちは外国人にちがいないけれども、それならば、と、トランクをいくつも橇につんでボリシャーヤ・モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)・ホテルへ納るような、そういう種類の外国人ではなかったし、ソヴェト生活に対して、そういう気分をもって暮してもいないのだった。

素子も黙った。黙ってタバコの煙をはいている。

こわい顔をして口をきかなくなってしまった二人の女を見ながら、ルケアーノフは不安にたえないようだった。彼はくりかえして、

「よろしいですか。わたしはあなたがたが事情を完全に了解されることを期待しています」