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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

それほど彼女たちは愉快に笑うのだった。写真は、まだとるところまでこぎつかない。

タバコを一服すると、金髪の青年は、こんどこそシャッターをきる決心らしく、上衣をぬいで、伸子がおどろいたことには、まだ雪がのこっている気候だというのに夏の紺と白との荒い横縞のスポーツ・シャツ一枚になった。四人はまた前のとおりの型で、自分たちをこりかたまらした。そして、こっちで見ている伸子の体までこわばって来るような数秒の緊張ののち、シャッターがきられた。

よほどフィルムが大切にちがいなかった。スナップのためにはたった一度シャッターがきられたきりだった。なおしばらく若者たちは、ガラス屋根の上にのっていることを楽しんで、やがて降りて行った。

それらは、ほんの些細な光景にちがいないのだ。が、伸子の心に、いちいち触れた。触れて何かの響きを感じさせた。

伸子の目の下にふとあらわれるこんな光景と、素子が銀製のスプーンを買ったりすることとの間に、伸子は、体が何かにはさまれているような矛盾を感じるのだった。

パッサージへ引越して来ると間もない日、素子は正餐まえの散歩に伸子を誘い出した。