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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
十二
このメーデーに、日本では川崎に武装した労働者の行進が行われた。
プラウダに次々報道される各国のメーデーのニュースのなかに、そういう記事を見出したとき、伸子は、衝撃をうけた。伸子は、日本がどういうことにか成ったかと思った。
「革命的な数百名の労働者が武器をもって行進したってあるけれど――でも、なぜ?」
一九一八年の米騒動のときのような意味があるわけではないらしかった。武装するということも全国的に行われたのではなくて、そんなことのあったのは川崎市でだけのことらしかった。
「武装したなんて、変なみたいな話だな。どうせおまわりとぶつかるのが関の山なんだろうのに、武装なんて――」
伸子たちの部屋の入口よりにおかれている補助ベッドに腰かけている若い画家の蒲原順二が、素子の不審を註釈するように、
「このごろ、とてもひどいですよ」
伸子たちの知らない日本を説明した。
「市電のストライキのときだって、従業員はしずかにしていたのに、いきなり催涙弾をぶっぱなしたんですから」
「あなた、ごらんになったの?」
「僕は去年の暮にもうベルリンだったから、現場は見ません、『戦旗』に出ていた写真、みませんでしたか」