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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
気がねなしに、ぬいだり着たりすることは伸子にとって新鮮なくつろぎだった。
そういうある朝、二人きりの、のんきな時間で伸子と素子とが茶テーブルに向いあったとき、ドアがノックされた。何となし、ききなれないノックの音だった。伸子と素子とは、目を見合わせた。
「お入りなさい」
素子の声といっしょにドアがあいて、姿を現したのは、ベルリンの川瀬勇だった。
「やあ――いま、お茶かい?」
まるで、ついそこから来たひとのような調子で、川瀬は、あいている長椅子のところへ行ってかけた。
「その後、いかがです?」
「そっちこそ、どうなのさ」
「うん、まあ、相変りつつ、相変らずってところだな」
「中館君は日本へかえったらしいね」
「ああ。結局帰ることにしたんだ。――その方がいいと思うだろう?」
伸子たちがベルリンに滞留した去年の初夏、中館公一郎は川瀬勇などのグループにまじっていて、映画監督として新しく生きる方法について、いろいろの問題を悶んでいた。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ歌舞伎が来たとき、中館もモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいてソヴキノの仕事ぶりを研究したりもした。