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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
それまでに、伸子はパリで自分たちのパリ生活というものを経験しておきたかった。それはパリのあたりまえに暮している人々の間にまじりこんだ生活であり、サンティームまでをこまかく計算する倹約な生活への共感であり、しかもパリがパリとして歴史のなかに生きて来ているパリにしかないある精神をとらえようとする生活なのだった。
磯崎夫妻は伸子たちとはじめての夕飯をRIJOですますと、子供がくたびれすぎるからと、まだ夜がふけないうちに帰った。この人たちは、モンパルナスから歩いてじきのデュトという街に住んでいるのだった。伸子たちは、一冊のパリ地図を買った。赤い表紙に銀色の活字で「区別パリ」と書いてある。磯崎恭介は、そのときみんなで休んでいたキャフェの円卓の上でその地図の第六区の頁をあけた。そのとき伸子たち一行がいる地点はひろくて長いモンパルナスの通りのほぼなかほどのところだった。モンパルナスは、天文台の角でサン・ミシェルの大通と出会っていて、その左側にルュクサンブール公園があり、ずっとセイヌ河よりの右にソルボンヌ大学があった。
「われわれの住んでるのはこの辺なんですがね」