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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
うしろから、白い清潔な石の階段を、伸子たちなら三階まで歩いてのぼってゆくわけだった。
ガリックへ移った日の夕方、伸子は一つの発見をして興がった。それは、パリのエレヴェーターはほんとの上昇機だということだった。ガリックのエレヴェーターは三階でよんでもあがって来なかった。パリの人々は電力を無駄にはつかわないことにしているのだった。
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で暮していた一年半ちかくの間、伸子は実によくひとりで、あっちこっちと歩きまわった。用事があってのときも、そうでなくてのときも。パリでは素子も一緒になって歩いた。表紙の赤い「区分パリ地図」をハンド・バッグの下にもって。ある日はエトワールの凱旋門をふりだしに、あるときはルーヴルの美術館からリヴォリ・マデレーヌへと。ブル※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ールの午後は、どこもかしこも外国人で溢れていた。六月はじめのマロニエの木蔭のこころよい歩道の上にも、キャフェのテラスも。
グラン・ブル※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ールの角のキャフェ・ド・ラ・ペイのテラスに休んで街を眺めていると、伸子たちの前を、濃い新緑につよいコントラストで異国的な情緒を漂わせながら、アラビア人が純白の寛衣のかげから黒檀の皮膚を輝やかせて歩いて行った。