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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
論のプリズムを通し、分解されたものを、更に意志的に構成しているのだった。
とくに、日本人の生活では見のがせない男と女のちがいというようなものが、柔かい体へ切りこんで来る刃のように伸子に実感された。率直に云ってよければ、伸子は恭介の作品からどんな本源的な独創力も魅力も感じることはできなかった。花の分解や構成の方法、そこにある配色。どれもどこかでいつかどっさり見たこの頃のフランスの絵の一つの感じだった、朱の色のしゃれた置きかたそのものまで。しかし、こういう理性的な絵を描いている恭介は、パリの日々のなかで、より自然発生の、より感性的な妻の須美子に、君の絵は絵以前だと云って画架を立てさせずおくことができているのだ。二十七歳と二十五歳の若い夫婦であるだけ、その間にはもう子供が二人生れている若い夫婦であるだけ、恭介がどうでも、自分の絵をものにしようとあせる気分のあることが、伸子にまざまざとわかった。
「――磯崎さんも、たいへんねえ」
伸子が我知らず重い息といっしょにそう云ったのは、この現代絵画の常識ともうけとられる境地から、磯崎が彼自身の世界をつかみ出して来るためには、これから先の幾階程があるだろう、という感想だった。