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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
そう云うものの、素子は時間が来ると、案外面倒くさがらずよく似合う黄粉色のスーツに白絹のブラウスに着換えた。
「ぶこちゃん、なにきてゆくんだい」
「例のとおりよ――いけない?」
「結構さ」
鏡の前に立って、白い胸飾りのついた紺のワンピースの腕をあげ、ほそい真珠のネックレースを頸のうしろでとめている伸子を見ながら、素子は、ついこの間気に入って買った皮外套に揃いの帽子をかぶり、まだすっていたタバコを灰皿の上でもみ消した。
「さあ、出かけよう」
二階の秋山宇一のところへおりた。
「いまからだと、丁度いいでしょう」
小型のアストラハン帽を頭へのせながら秋山もすぐ立って、四人は狩人広場から、郊外へ向うバスに乗った。街燈が雪道と大きい建物を明るく浮上らせ、人通りの多い劇場広場の前をつっきって、つとめがえりの乗客を満載したその大型バスが、なじみのすくない並木道沿いに駛るころになると伸子には行手の見当がつかなくなった。
「まだなかなかですか?」
「ええ相当ありますね――大丈夫ですか」
伸子と秋山宇一、内海と素子と前後二列になって、座席の角についている真鍮のつかまりにつかまって立っているのだった。