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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
一番どんづまりの三分の一が寝室にあてられているらしくて、高い衣裳箪笥が見えた。素子が、
「わたしたちは、いまホテルにいますけれど、そろそろ部屋をさがしたいと思っているんです」
と言った。
「モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で貸室さがしをするのは、職業を見つけるより遙かに難事業です――グットネル、あなたの友情がためされる時が来ましたよ」
よっぽどその馴鹿の毛皮外套が気にいっているらしく、ヴェラの室へもそれを着たまま入って来て、ドアによりかかるようにして立っていたグットネルが、間もなく劇場へゆく時間だからと、出かけて行った。
おもに素子とヴェラとが話した。未来派の詩をかいていたケンペルは、革命後同伴者の文学グループに属し、直接社会問題にふれない動物とか自然とかに題材をとった散文詩のようなものをかいていた。フランス古典では、ロスタンの「シャンタ・クレール」があり、現代ではコレットという婦人作家が、動物に取材して気のきいた作品をかいているというような話がでた。体つきも小柄なヴェラは、行ったことがあるのかないのか、芸術や服装についてはフランス好きで一貫しているらしかった。