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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
それから、ヴェラ・ケンペルも。やっぱり、気のきかない客だということを、わたし退屈だわ、と云う表現でほのめかしただろうか。
日本の政府はソヴェトへの旅行の自由をすべての人に同じようには与えないから、公然と来られるものはいつも半官半民の特殊な用向の日本人か、さもなければ伸子たちのような中途半端な文化人ということになっている。けれども、仮にもし女の労働者がどういう方法かでモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来たとして。
そういう人に対してだったら、ポリニャークもケンペルも、決して伸子に対したようには行動しない、ということは伸子に直感された。働く女の人なら、彼女がどんなに、にぇ、まぐう、と柔かく発音しようと、その女の体が日本の女らしく酔った大きな男に軽々ともち上げられる小ささしかなかろうとも、ポリニャークは伸子をそうしたようにそのひとを掬いあげたりはしないだろう。その女の労働者は、たとえ日本から来た人であろうと、労働者ということでソヴェトの労働者の全体とつながっている。その女のひとを掬いあげることは、ソヴェトの女の労働者の誰か一人を掬いあげたと同様であり、そういうポリニャークの好みについてソヴェトの働く人々は同感をもっていない。