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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
伸子はそう気づいた。
「いま第一国立オペラ・舞踊劇場で『赤い罌粟』をやってますよ」
ちゃんと着かえる機会を失った素子が部屋着のまま、茶をのみながら話していた。
「あんなのは、どうなんです? 正統的なバレーとは云えないんですか」
「レーニングラードでは、このシーズン、『眠り姫』をやっているんですが、僕はやっぱり立派だと思いました――勿論『赤い罌粟』なんかも観たくてこっちへ来たんですが」
宮野というひとは、
「僕は主として古典的なバレーを題目にしているんです。何と云ってもそれが基礎ですから」
と云った。
その頃、ソヴェトでは、イタリー式のバレーの技法について疑問がもたれていた。極度にきびしい訓練やそういう訓練を経なければ身につかない爪立ちその他の方法は、特別な職業舞踊家のもので、大衆的な舞踊は、もっと自然であってよいという議論があった。伸子がこれまでみた労働者クラブの舞踊は、集団舞踊であっても、いわゆるバレーではなかった。伸子は、すこし話題が面白くなりかかったという顔つきで、
「日本でも、バレー御専門だったんですか?」
ときいた。
「そうでもないんです。――折角こっちにいるんだからと思いましてね。